血糖値測定で刺す針が痛くない部位は

いつも自分で血糖値を計っている友人が、「指先に針刺すのが痛くてウザくて(気持が)下がる」とよく言ってました。「べつに腕でもいいんだよ」と教えると、次からお腹でやっていました。いろんな所でやってみて、そこが一番痛くなかったんだとか。血糖値測定(の穿刺)は、いろんな人がいろんな部位でやっています。指じゃなくてもかまいません。どこが痛くないか、ちょっと挙げてみました。

前腕部
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前腕部の内側や外側に刺すと痛くない、と言う人がたくさんいます。

欧米では血糖値測定の痛みに関する研究が2000年頃から行なわれているんですが、354人を対象にしたある研究(医学誌「Diabetes Care」2001年7月号掲載)では、97%の人が「(指先より)前腕のほうが痛くない」あるいは「前腕だと痛みがない」と言っています。

また、2000年に発表された別の研究(医学誌「Diabetes Technology & Therapeutics」掲載)では、215人中の95%が「(指先より)前腕のほうが痛くない」と言っています。

私の周囲にも前腕で測定している人がいます。ネット上にも「前腕でやっている」と言う人は意外に多くいました。

手のひら~空手チョップする小指側
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手のひらの空手チョップをするところ、詳しく言うと、小指の付け根から手首にかけての膨らみに刺す人も結構いるようです。

以前に取材したある専門医は、指先を痛がる患者さんにこの場所を勧めていました。いくつかの血糖値測定器の説明書を読むと、指先と並んでこの場所での採血を勧めているものもあります。

耳たぶ

「指は痛いので耳たぶに刺している」と言う人が、以前インタビューした患者さんの中にいました。病院によっては、看護師が耳たぶで血糖測定するところがあります。その人もそれを見て、「耳たぶでもいいのか」と思ったそうです。

ネットで調べると耳たぶ派も結構いるようで、「耳たぶは痛みが少なくていいですね」というような書き込みもありました。

ただ、耳たぶは自分でやりにくいのが難点かも。鏡を見ながらやらなければならず、失敗しやすい(上手く刺さらず血が出ない)という意見がありました。それで、家族にやってもらっているという人もいます。また、穿刺器(ランセット)のカチンという音が耳元で大きく聞こえて、最初はビックリするそうです。

上腕
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上腕は、冒頭に書いた私の友人(男性)が試した場所で、「痛くない」と言っていました。ただ、袖を捲るのが面倒だ(特に冬は)、とのこと。

過去に取材した患者さんの中にも、「上腕が痛くない」という人が数人いました。

太もも・ふくらはぎ

私の知っている人で、太ももやふくらはぎで測定している人はいませんが、ネットで探すといました。痛みは少ないそうですが、いちいちズボンを捲り上げたり、ストッキングを下ろしたりするのが面倒なようで、太ももやふくらはぎはあまり人気がないようです。

膝上3センチのところ
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引用元:YouTube/Genteel
アメリカには吸引機能が付いた少し特殊なランセット(針を刺す器具/穿刺器)があります。「無痛(painless)」と謳われているこのランセット「ジェンティール」のインストラクションビデオの中で、「膝上3センチ」が推奨されていました。

この場所は毛細血管が密集していながらも、痛みを感じる神経が少ないとのこと。なので、痛まず十分な量の血液が出るそうです。



前出の友人が気に入った場所が腹です。私が知る限り、腹でやっている人は他にいません。ただ、ちょっと調べてみると、東京医科大学病院では『穿刺痛緩和』のために、指先の他に『腹壁や指球部が穿刺部位として推奨されている』(2015年 第35回東京医科大学病院看護研究集録より抜粋)ようです。腹壁とはお腹の前面のことですね。

お腹を推奨している病院があるとは、私は初めて知りました。それにしても、前腕や太ももじゃなく、なぜお腹なんだろう? 取材に行くことがあったら理由を聞いてみたいものです。


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肘から血糖測定しているという人を、一人知っています。肘だと皮が薄くて痛そうに思えるのですが、その人によれば、なぜか痛くないそう。痛さっていうのは人それぞれですね。具体的には肘のどの部分に刺すのか……残念ながら聞き忘れました。

親指の爪の根元と第1関節の間の皮膚
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これはネットで見つけた意見です。親指の第1関節を被っている皮膚の、爪の近くが痛くない、という書き込みがありました。いや~、なんかマニアック。私はまだ試していません。いろんな人が、いろんな無痛エリアを持っているようですね。

手の甲の親指と人差し指の間
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糖尿病らしきあるブロガーさんが、手の甲が痛くない、と書いていました。具体的には、手の甲の親指と人差し指の間、とのこと。

指の最先端は痛い

指の最先端、いちばん先は痛い場所です。そこには神経が密集していて、感覚が鋭くなっているから。これは、上に挙げた3つの論文のどれにも書いてあります。
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一般的に「血糖値測定の針は指先に刺すのがいい」と言われていますが、この「指先」を文字通りに受け取って、最先端部でやっている人もいるんじゃないでしょうか。

それが痛くて嫌だ、と感じたら、もう少し下の、指紋のあるあたりでもいいんです。
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また、真っ正面でなくても、少し横腹でもいいんです。いくつかの血糖値測定器の説明書には、指の横腹が模範例として出ています。

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引用元:テルモ メディセーフミニGR-102の取扱説明書

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引用元:ジョンソン・エンド・ジョンソン ワンタッチウルトラの取扱説明書

(痛いけれど、指の最先端でやるメリットもあります。そこは毛細血管が集まっていて血が出やすい。だから、血量不足で測定「エラー」になりにくい。一般的に指先が良いとされている理由は、これが大きいと思います)

気をつけること

指先以外の部位で測定するときに、気に留めておいて欲しいことがあります。指先以外で計ると、血糖値の変化が少し遅れて出るということです。例えば前腕で計ると、血糖値の上下は指先より10~15分ほど遅れて現れます(下のグラフ)。

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指先と前腕で採血した血糖値の変化(引用元:医学誌「Diabetes Care」2002年6月号掲載の論文「Glucose Monitoring at the Arm」):自己血糖測定器「フリースタイル」を用いて、食後に、指先と前腕で血糖測定した結果。縦軸は血糖値(mmol/l)、横軸は時間(分)。下向き矢印で示された時点でインスリンを注射している。白丸を繋いだ線が指先の血糖値。黒丸を繋いだ線が前腕の血糖値。前腕の血糖値を示す山が、全体的に右にずれ、15分ほど変化が遅れていることがわかる。

この遅れは、普段の血糖値測定では特に問題になりません。空腹時血糖を計るなら、そもそも血糖値に変化がない時なので、遅れてもほぼ同じ値です。食後血糖を計るなら、いつも食後の同じ時間に計れば日々の変化は正しく分かります。

ただ、低血糖を起こしているときだけは注意。体の調子がヘン→(前腕など指先以外の部位で)計ってみる→変化が遅れて出るので、まだ低血糖の数値ではない→原因がわからないままひどくなる、ということがあり得ます。低血糖かどうかを確かめたいときは、多少痛くても指先で。

以上、血糖値測定の針が痛くない部位を挙げてみました。「ここ、いいかも」と思う場所があれば、一度試してみてはいかがでしょう。

針の痛さが死ぬほど嫌だという人、何度も刺して指先がボコボコになっている人、小さな子供に痛い思いをさせて測定するのが可哀想というお母さんは、ランセット(穿刺器)を選ぶという手もあります。

ランセットなんて、どれも同じじゃないか、って?

そうでもないんです。

痛くない穿刺器(ランセット)について、→「血糖値測定の針はもう痛くない、米国特許のランセット(穿刺器)が無痛なわけ」のページで書いています。

〈追記〉
アボット プレシジョンエクシードの取扱説明書に、「親指の付け根」が採血部位として挙げられていました。そこが痛くないという意見は、私は耳にしたことがありませんが、一応候補として挙げておきます。
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引用元:アボット プレシジョンエクシードの取扱説明書



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